― 成形から加工・組立まで、トータルコスト最適化の実践ガイド ―
プラスチック押出成形では、成形直後の製品に対して「切断」「穴あけ」「曲げ」「接着」「印刷」「インサート」などの2次加工を施すことで、最終製品としての付加価値を高めることが可能です。しかし、2次加工は単なる後工程ではありません。コスト・品質・納期すべてに大きな影響を及ぼす重要な要素です。
本コラムでは、押出成形における2次加工の代表例、工程設計上の考慮点、一貫対応によるコストメリット、さらには実際の成功事例をご紹介します。これらの知識を活用することで、製品開発の効率化とコスト削減を同時に実現できるでしょう。
1. 押出成形における代表的な2次加工とその特徴
押出成形品の2次加工は、製品の用途と要求品質に応じて多様な手法が用いられます。以下に主要な加工方法をご紹介します。
1-1. 穴あけ加工:プレス加工による高精度・高効率対応
押出成形品における穴あけ加工は、自動車部品や建材部品の取り付け用として欠かせない工程です。多くの場合、金型で一体成形するのではなく、プレス加工で対応することで、設計の柔軟性と金型費の抑制を両立できます。
当社の主力加工方法
- プレス機による打ち抜き加工:高精度・高速加工で安定品質を実現
- 複数穴同時加工対応:専用治具により一度に複数箇所を同時加工
- 様々な穴径・形状に対応:丸穴から異形穴まで幅広く対応可能
プレス加工のメリット
- 金型構造の簡素化によるコスト削減
- 穴位置の変更が容易(設計変更への柔軟対応)
- 高い寸法精度と再現性の確保
- 大量生産時のランニングコスト優位性
1-2. 別部品の組付け加工:専用治具により一度に複数箇所を同時加工
押出成形品に対する金具・クリップなどの組付け加工は、最終製品としての機能性を高める重要な工程です。当社では専用治具を自社設計・製作することで、高精度かつ効率的な組付けを実現しています。
当社の組付け加工の強み
- 専用治具による位置決め精度の確保:ポカヨケ機能付きで品質安定
- 複数箇所同時組付け:一度の作業で複数部品を効率的に装着
- 多様な部品に対応:金属パーツから樹脂クリップまで幅広く対応
- 自動化による品質向上:センサー付き治具で人的ミスを排除
対応可能な組付け部品
- 金属クリップ・留め具類
- 樹脂製クリップ・パーツ
- ゴム製シール・パッキン
- 機能部品(センサー、スイッチ等)
適用事例
- 自動車用パーティングシールへのクリップ組付け(12箇所同時装着)
- 建材用プロファイルへの金具取り付け
- 電子機器筐体への機能部品組込み
【PP+TPE複色押出成形事例】冷却効率UPのラジエーターシールで密閉性確保&工数削減を実現
1-3. 両面テープ・意匠保護マスキング貼り付け加工:専用治具による高精度な貼り付け作業
押出成形品への両面テープ貼り付けや意匠面保護のためのマスキング貼り付けは、最終製品の機能性向上と品質保護を実現する重要な工程です。製品としての完成度を高めると同時に、最終ユーザー側での組立工数を削減する効果があります。当社では専用治具を製作し、一定の品質で効率的な貼り付け作業を実現しています。
当社の貼り付け加工の特徴
- 専用治具による正確な位置決め:貼り付け位置のバラつきを最小化
- 気泡・シワの防止:専用ローラーと治具により美しい仕上がりを実現
- 多様なテープ材質に対応:厚み・粘着力の異なる材料に柔軟対応
- 剥離紙処理まで一貫対応:環境配慮と作業効率化を両立
主な貼り付け対象
【両面テープ】
- 最終ユーザーでの組立・固定用途
- シール・防水機能の付与
- 緩衝・防振機能の追加
【意匠保護マスキング】
- 輸送時・保管時の表面キズ防止
- 加工工程での部分保護
- 納品まで美観を維持
適用事例
- 自動車用内装部品への組立用両面テープ貼り付け
- 建材製品の意匠面マスキング保護
- 精密機器筐体への緩衝用両面テープ装着
【PVC押出成形事例】トラック外装ガーニッシュで意匠性と保護性能を両立し、美観&強度を向上
2. 工程設計で考慮すべき重要ポイント
2次加工を成功させるためには、押出成形の設計段階から総合的な検討が必要です。
2-1. 加工性を考慮した断面設計
2次加工を前提とする場合、成形品に対して安定した治具保持や搬送が可能かを初期段階から考慮する必要があります。単なる断面設計だけでなく、製品長・剛性・曲がりやすさ・加工部のアクセス性も重要な要素です。
設計時のチェックポイント
- 治具での把持が可能な形状・寸法になっているか
- 加工時の変形や破損リスクはないか
- 搬送時の安定性は確保されているか
- 加工精度に影響する要素は排除されているか
2-2. 歩留まり・精度管理の最適化
2次加工では、不良発生が成形工程だけでなく加工工程でも起こるため、トータルでの歩留まりを意識した工程設計が求められます。
品質管理のポイント
- 寸法バラつきに強い治具設計:公差吸収機能の組み込み
- 工程内検査の自動化:リアルタイムでの品質監視
- トレーサビリティの確保:不良発生時の原因追跡体制
- 予防保全の徹底:機械精度維持による安定品質
2-3. 工数と搬送ロス最小化による効率化
各工程を別工場・別業者で行う場合、搬送コストや納期リスクが発生します。成形〜加工〜検査〜梱包を一拠点で行える体制が、リードタイム短縮や在庫圧縮に直結します。
効率化のメリット
- 工程間待ち時間の削減
- 搬送・梱包コストの最小化
- 品質問題発生時の迅速な対応
- 在庫レベルの最適化
3. 一貫対応による圧倒的なコストメリット
製造業において「餅は餅屋」という考え方もありますが、押出成形の2次加工においては一貫対応による優位性が際立ちます。
3-1. 当社の一貫対応体制
当社では、押出成形から2次加工・組立・検査・梱包までを一貫して対応可能な体制を構築しています。
一貫対応の特徴
- 工程間の連携によるムダ・ムリ・ムラの完全排除
- 加工のトライ&エラーをその場で検証・改善
- 金型・治具・検査機器まで自社設計・自社製作
- 品質情報の一元管理による迅速な改善対応
3-2. 従来方式との比較
項目 | 従来方式(分離発注) | 当社一貫対応 |
コスト | 各社でマージンが発生 | 20-30%のコスト削減 |
納期 | 工程間調整により延長 | 大幅短縮 |
品質 | 責任の所在が不明確 | 一元管理で責任明確 |
設計変更 | 各社との調整が必要 | 迅速に対応 |
在庫 | 各工程で在庫が発生 | 在庫の最小化 |
これにより、従来は複数社に分かれていた業務を一元化し、総合的なコストダウンを実現しています。
4. 成功事例:自動車用パーティングシールの革新的一貫生産
4-1. 解決すべき課題
お客様からご相談いただいた自動車用パーティングシールには、以下のような課題がありました
- 従来の金属インサート成形されたゴム部品は重量・コスト・作業性に問題
- 樹脂化による軽量化は必須だが、取り付け穴13箇所・クリップ装着12箇所が必要な複雑構造
- 年間60万本という大量生産での品質安定性確保
- 自動車メーカーの厳格な品質基準への適合
4-2. 当社の革新的解決策
材料技術の革新
- 金属芯材→PP、ゴム材→TPEへの完全置換
- 軽量化と必要な反発力を両立する材料組み合わせの最適化
- 耐候性・耐久性試験による長期品質保証
生産システムの構築
- 加工スペース確保のために専用建屋+専用レイアウトを新設
- プレス型・クリップ挿入・検査機器を自社設計し、全工程を自動化
- センサー付き治具によるポカヨケ対応で人的ミスを完全排除
- リアルタイム品質監視システムの導入
4-3. 驚異的な成果
定量的成果
- 年間60万本以上の安定量産を継続実現
- 不良率ゼロを継続中(4年間実績)
- 従来比重量20%削減を達成
お客様からの評価
- 高品質かつ納期短縮を同時実現
- コスト削減効果により価格競争力向上
- 設計変更への柔軟対応により開発期間短縮
5. 業界別2次加工ニーズと対応事例
5-1. 自動車業界
- ドアシール・ウェザーストリップ:切り欠き・穴あけ加工+クリップ装着
- ワイパー部品:定寸カット+穴あけ加工
- 内装部品:切断・切り欠き加工+接着加工
5-2. 建築・建材業界
- 窓枠・サッシ材:端部加工+角部成形
- 配管部材:穴あけ+部材組付け
- 浴室目地材:定寸カット+ピッキング作業
5-3. 電子・電気業界
- 医療用マッサージ機:スリット加工+金属部品組付け
- 業務用冷蔵庫:穴あけ加工+切り欠き加工
- シャッター部材:組み立て加工+部品挿入
6. コスト削減を実現する設計のポイント
6-1. 設計段階からの2次加工考慮
形状設計の最適化
- 加工しやすい断面形状の選択
- 治具設計を考慮した把持部の設計
- 加工精度に影響する要素の排除
材料選定の重要性
- 加工性に優れた材料の選択
- 後加工での変形・クラック防止
- 接着・溶着適性の確認
6-2. 工程統合による効率化
同期化生産の実現
- 成形と加工のタイミング最適化
- 在庫レスによる回転率向上
- 品質フィードバックの迅速化
7. よくある質問と解決策
Q:2次加工を追加すると、どの程度コストアップしますか?
A:加工内容により異なりますが、一貫対応により分離発注比20-30%のコスト削減を実現しています。詳細は個別にお見積りいたします。
Q:小ロットでも2次加工対応は可能ですか?
A:はい。治具の共用化や段取り時間短縮により、小ロットでも効率的な対応が可能です。ただし、イニシャル費が割高になります。
Q:設計段階から相談できますか?
A:むしろ設計段階からのご相談を推奨します。成形性と加工性を両立する最適設計をご提案できます。
8. まとめ:2次加工から考える押出成形の最適解
押出成形の「成形」だけで完結する時代は終わりました。2次加工・アセンブリ・検査・梱包までの一気通貫が、コスト・品質・納期すべてにおいて差別化のポイントとなります。
成功のカギとなる要素
- 断面形状設計と同時に2次加工性も検討:設計段階からの総合最適化
- 工程設計・治具設計を内製:早期立ち上げと継続改善の実現
- 製品だけでなく「工程」も提案できる体制:真のパートナーシップ構築
当社ではこれまでに2,000型以上の金型製作実績と、45件以上の公開事例をベースに、お客様の課題に対する最適な提案を行っています。
製品形状・加工内容・ご予算など、どんな段階からでもご相談いただけます。「こんな加工は可能だろうか」「コストを抑える方法はないか」など、お困りの際はお気軽にお声がけください。
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押出成形に関するご質問や課題がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 材料選定から工程設計、QA/QC体制の構築まで、長年の実績を生かした最適なご提案をさせていただきます。