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「ゴムでは耐摩耗性が足りない」「軟質PVCでは弾性回復が不十分」——このような課題を抱える設計者は少なくありません。耐摩耗性と柔軟性を高次元で両立できる樹脂として、今注目されているのがTPU(熱可塑性ポリウレタン)です。
本記事では、TPU押出成形の基礎から設計・加工のポイント、用途事例までを体系的に解説します。ポリウレタンチューブの採用を検討している方、ゴム代替材料を探している方は、ぜひ参考にしてください。

TPUは「熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane)」の略称です。分子構造上、硬質部分(ハードセグメント)と軟質部分(ソフトセグメント)が交互に連なったブロック共重合体として構成されています。
ハードセグメントは剛性と強度を担い、ソフトセグメントは柔軟性と弾性を発現します。この二相構造により、本樹脂はゴムのような柔らかさと樹脂のような強さを併せ持ちます。
この材料は原料のポリオール成分により、以下の3系統に分類されます。
| 分類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| エーテル系 | 耐加水分解性・耐カビ性に優れる | 空圧チューブ、医療用途 |
| エステル系 | 機械的強度・耐油性が高い | 産業機械部品、コンベア部材 |
| カプロラクトン系 | 耐加水分解性と機械強度のバランス | 高耐久チューブ、特殊用途 |
使用環境に応じて適切な系統を選定することが、製品性能を左右する重要なポイントです。
TPUと比較されることが多い材料に、加硫ゴムとTPE-S(スチレン系熱可塑性エラストマー)があります。
加硫ゴムは架橋構造を持つため、一度成形すると再溶融できません。これに対し本樹脂は熱可塑性のため、押出成形・射出成形が可能で、端材のリサイクルも容易です。成形サイクルも短く、量産性に優れます。
TPE-Sは成形性に優れますが、耐摩耗性や耐油性では本樹脂に劣ります。機械的強度が求められる用途では、TPUが選ばれるケースが多くなります。

この材料が耐摩耗樹脂として評価される理由は、その分子構造に由来します。ソフトセグメントが外力を吸収し、ハードセグメントが変形からの復元力を発揮します。この協働作用により、摩擦や衝撃に対する「粘り強さ」が生まれます。
テーバー摩耗試験(ASTM D4060、H-18ホイール、1000g荷重)において、本樹脂の摩耗量は一般的に20〜50mg/1000回転程度です。軟質PVCが100〜200mg、天然ゴムが80〜150mg程度であることと比較すると、その耐摩耗性の高さが明確になります。
この特性から、搬送ラインのガイド部品やコンベアスカートなど、常に摩擦にさらされる部位に採用されています。
本樹脂は硬度選択の幅が広く、ショアA60(軟質)からショアD75(硬質)まで対応可能です。同一材料系統で硬度を調整できるため、設計自由度が高まります。
弾性回復率も優れており、一般的なグレードでは90%以上の値を示します。繰り返し曲げや圧縮を受けるチューブ・ホース類において、この特性は長寿命化に直結します。
JIS K6262に基づく圧縮永久歪試験(70℃×22時間、25%圧縮)では、15〜30%程度の値を示します。加硫ゴムと同等以上の性能を、熱可塑性樹脂として実現しています。
本樹脂は多くの油類・溶剤に対して良好な耐性を持ちます。特にエステル系は耐油性に優れ、鉱物油・作動油・燃料油への接触用途に適しています。
具体的な耐薬品性は以下の通りです。
| 薬品・油類 | エステル系TPU | エーテル系TPU |
|---|---|---|
| 鉱物油(マシン油) | ◎ | ○ |
| 作動油(油圧オイル) | ◎ | ○ |
| 脂肪族炭化水素 | ○ | ○ |
| 希薄酸・希薄アルカリ | ○ | ○ |
| 水(長期浸漬) | △ | ◎ |
◎:優れる ○:良好 △:注意が必要
ただし、高温の水や蒸気には注意が必要です。エステル系は加水分解しやすいため、水接触環境ではエーテル系を選定してください。

押出成形において、最も重要な管理項目は原料の乾燥です。本樹脂は吸湿性が高く、水分を含んだまま成形すると加水分解が進行します。その結果、成形品に気泡が発生し、機械的強度が大幅に低下します。
推奨乾燥条件は、80〜100℃で2〜4時間です。乾燥後の含水率は0.02%以下を目標とします。除湿乾燥機の使用が望ましく、熱風乾燥機では乾燥効率が低下する場合があります。
成形温度は、グレードにより異なりますが、170〜220℃が一般的な範囲です。シリンダー設定は後部から先端にかけて段階的に上げる勾配設定が基本となります。過度な高温は熱分解を引き起こすため、温度管理には十分な注意が必要です。
ポリウレタンチューブを設計する際、肉厚の設定は使用圧力と柔軟性のバランスで決定します。空圧用途では、一般的に外径4〜16mm、肉厚1〜2.5mm程度が採用されます。
押出成形における一般的な寸法公差は以下の通りです。
| 寸法区分 | 標準公差 |
|---|---|
| 外径 φ10mm以下 | ±0.1mm |
| 外径 φ10〜30mm | ±0.15mm |
| 肉厚 2mm以下 | ±0.1mm |
| 肉厚 2〜5mm | ±0.15mm |
高精度が求められる場合は、金型設計と引取速度の最適化が必要です。当社では2000型以上の金型実績を活かし、公差要求に応じた金型設計を行っています。
本樹脂は他材料との接着性に優れるため、複合成形に適しています。当社が得意とする硬軟二色押出技術を用いれば、TPUとPP、TPUとナイロンなどの異材を一体成形できます。
例えば、芯材にナイロンを使用して剛性を確保し、外層に本樹脂を配置して耐摩耗性と柔軟性を付与する構造が実現可能です。従来は接着や後加工で対応していた複合構造を、1工程で成形できるため、コスト削減と品質安定につながります。
難形状や特殊な複合構造についても、当社では他社で断られた案件を多数受け入れています。VA/VE提案を含めた技術相談に対応していますので、お気軽にご相談ください。

チューブの代表的な用途は、空圧配管・油圧配管です。耐摩耗性と柔軟性により、可動部への配管や頻繁な屈曲が発生する箇所で長寿命を発揮します。
搬送ラインでは、コンベアベルトのガイド部材やスカート材としても採用されています。搬送物との接触による摩耗に強く、ガイド部材の交換頻度を低減できます。
ケーブル被覆材としての用途も拡大しています。繰り返し曲げへの耐久性が求められるロボットケーブルや、耐油環境で使用される産業機器ケーブルに採用されています。
本樹脂には医療グレード、食品接触グレードが用意されています。医療グレードでは、ISO 10993に準拠した生体適合性試験をクリアした製品が存在します。カテーテルや医療機器チューブとしての採用実績があります。
食品分野では、FDA(米国食品医薬品局)規格やEU規則(EC)No.10/2011に適合したグレードを選定する必要があります。食品接触用チューブ、飲料移送ホースなどに使用されています。
これらの規格適合グレードは価格が高くなりますが、安全性認証のコストを考慮すると、認定済みグレードを使用する方が合理的です。
グレード選定で失敗しないために、以下の3つの質問を検討してください。
1. 使用環境の温度範囲は?
常用使用温度は-40℃〜+80℃程度が一般的です。高温環境ではエステル系、低温環境ではエーテル系が有利です。100℃を超える環境では、耐熱グレードの検討が必要です。
2. 接触する薬品・油類は何か?
前述の耐薬品性表を参考に、接触する物質に応じて系統を選定します。水接触が想定される場合は、エーテル系またはカプロラクトン系を選んでください。
3. 必要な硬度と弾性回復率は?
硬度はショアA/Dで指定します。繰り返し変形が多い用途では、弾性回復率の高いグレードを選定します。
これらの条件が明確になれば、適切なグレード提案が可能です。当社では、試作から量産・二次加工まで一貫対応しているため、検証段階からの相談を受け付けています。
TPU押出成形は、耐摩耗性と弾性を高次元で両立できる加工方法です。ハードセグメントとソフトセグメントの二相構造により、ゴムのような柔軟性と樹脂のような強度を実現します。
材料選定ではエーテル系・エステル系・カプロラクトン系の特性を理解し、使用環境に応じた選択が重要です。加工面では乾燥管理を徹底し、適切な成形温度で加工することが品質確保の鍵となります。
ポリウレタンチューブをはじめ、産業機械部品・医療機器・食品関連まで幅広い用途で採用されています。ゴム代替や高機能エラストマーをお探しの方は、TPU押出成形を選択肢に加えてみてください。
押出成形に関するご質問や課題がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 材料選定から工程設計、QA/QC体制の構築まで、長年の実績を生かした最適なご提案をさせていただきます。

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