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電気・電子機器の設計において、「難燃性」と「成形性」の両立に頭を悩ませていませんか。UL94規格のV-0グレードを満たしつつ、複雑な形状を押出成形で実現したい。しかし、難燃材料は加工が難しく、試作段階で想定外のトラブルが発生することも少なくありません。
本記事では、電線管やケーブルダクトなど電気部品向けの難燃押出成形について解説します。材料選定から設計・発注時の注意点まで、実務で役立つ情報をお伝えします。

電気・電子機器に使用するプラスチック部品には、火災リスクを低減するための難燃性が求められます。特に配線周りの部材は、ショートや過熱による発火リスクがあるため、厳格な規格への適合が必要です。
UL94は、米国の安全規格機関ULが定めるプラスチック材料の燃焼性試験規格です。垂直燃焼試験においてV-0・V-1・V-2の等級が設定されています。
| 等級 | 燃焼時間(1回) | 燃焼時間(合計) | 滴下物による発火 |
|---|---|---|---|
| V-0 | 10秒以内 | 50秒以内 | なし |
| V-1 | 30秒以内 | 250秒以内 | なし |
| V-2 | 30秒以内 | 250秒以内 | あり(許容) |
V-0は最も厳しい等級で、火炎を除去後10秒以内に自己消火する性能が必要です。電源周りの部品や筐体内部の部材では、V-0グレードを指定されるケースが一般的です。
水平燃焼試験で評価するHBグレードは、燃焼速度の制限のみで自己消火性は問いません。火源から離れた外装部品など、リスクの低い用途に限定されます。
日本国内では電気用品安全法(PSE)の技術基準も確認が必要です。JIS C 60695シリーズでは、グローワイヤー試験など異なる評価方法も規定されています。
電線管やケーブルダクトは、配線を保護・整理する重要な部材です。用途によって求められる難燃レベルは異なります。
屋内配線用の電線管では、JIS C 8411(合成樹脂製可とう電線管)に適合する必要があります。この規格では難燃性試験として、60秒間の炎接触後30秒以内の自己消火を求めています。
データセンターや工場の配線ダクトでは、より厳しいV-0グレードを指定されることが増えています。火災発生時の延焼防止と、煙・有毒ガスの発生抑制が重視されるためです。
設計段階で納入先の要求規格を明確にすることが、材料選定の第一歩となります。

難燃性能を持つ押出成形用樹脂には、複数の選択肢があります。コスト・加工性・環境規制対応のバランスを考慮した選定が重要です。
電線管や配線部材で多く使用される難燃樹脂を比較します。
| 材料 | 難燃等級 | 成形温度 | 特徴 | 概算単価 |
|---|---|---|---|---|
| 難燃PVC | V-0対応可 | 160〜190℃ | 自己消火性あり、低コスト | 安価 |
| 難燃ABS | V-0対応可 | 200〜240℃ | 耐衝撃性良好、塗装可 | 中程度 |
| 難燃PP | V-2〜V-0 | 200〜230℃ | 軽量、耐薬品性良好 | 中程度 |
PVC(ポリ塩化ビニル)は塩素を含むため、本質的に難燃性を持ちます。電線管では最も実績のある材料です。ただし、燃焼時に塩化水素ガスが発生するため、環境配慮の観点から代替を検討する動きもあります。
ABS樹脂は難燃剤を添加することでV-0グレードを達成できます。寸法安定性と表面外観に優れ、筐体部品に適しています。
PP(ポリプロピレン)は軽量で耐薬品性に優れますが、難燃化が難しい材料です。難燃剤を多量に添加するため、成形条件の管理が重要になります。
RoHS指令やREACH規則への対応、環境負荷低減の観点から、ハロゲンフリー難燃材料の需要が高まっています。
ハロゲンフリー難燃材料では、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物系難燃剤を使用します。燃焼時に水を放出して冷却効果を発揮する仕組みです。
代表的なハロゲンフリー難燃樹脂には以下があります。
ハロゲン系難燃剤と比較すると、同等の難燃性を得るために添加量が増える傾向があります。その結果、材料コストは1.5〜2倍程度高くなるケースが一般的です。
欧州向け製品や大手電機メーカー向け部品では、ハロゲンフリー仕様を標準とする動きが広がっています。
難燃剤を添加した樹脂は、標準グレードと比較して成形難易度が上がります。事前に想定されるトラブルを把握しておくことが重要です。
焼け・変色のリスク
難燃剤は熱分解しやすく、滞留時間が長いと焼けや変色が発生します。成形温度の上限管理と、スクリュー・ダイス内での滞留時間短縮が必要です。
ガス発生による外観不良
難燃剤から発生するガスが、製品表面に気泡やシルバーストリークを引き起こします。ベント付きシリンダーの使用や、材料の十分な予備乾燥が対策となります。
金型・スクリューの摩耗
金属水酸化物系難燃剤は研磨性が高く、成形機部品の摩耗を促進します。耐摩耗処理を施したスクリューや金型の採用が推奨されます。
難燃材料特有のこれらの課題に対応した成形条件の最適化が、安定した量産には不可欠です。

5G通信の普及に伴い、高周波帯域で使用する部品には低誘電特性が求められています。難燃性と低誘電性の両立は、材料選定の新たな課題です。
誘電率(Dk)は、材料が電気エネルギーを蓄える能力を示す指標です。誘電正接(Df)は、高周波電界中でのエネルギー損失を表します。
高周波信号を扱う部品では、誘電率と誘電正接の両方が低いことが望ましいです。数値が高いと信号の減衰や遅延が発生し、通信品質が低下します。
| 周波数帯 | 用途例 | 求められるDk | 求められるDf |
|---|---|---|---|
| Sub-6GHz | 5Gスマートフォン | 3.0以下 | 0.01以下 |
| ミリ波(28GHz〜) | 基地局アンテナ | 2.5以下 | 0.005以下 |
一般的なABS樹脂はDk=2.8〜3.2、Df=0.006〜0.01程度です。ミリ波帯域では性能が不足するため、専用の低誘電材料が必要になります。
高周波対応部品に使用される代表的な低誘電樹脂を紹介します。
PPS(ポリフェニレンサルファイド)
Dk=3.0〜3.5、Df=0.001〜0.002と低誘電正接が特徴です。本質的に難燃性(UL94 V-0)を持ち、難燃剤添加が不要です。成形温度は290〜320℃と高温になります。
LCP(液晶ポリマー)
Dk=2.9〜3.5、Df=0.001〜0.003の優れた電気特性を持ちます。耐熱性も高く、リフローはんだ工程にも耐えます。ただし、押出成形では流動異方性の制御が難しく、技術力が求められます。
フッ素系樹脂(PTFE・PFA・FEP)
Dk=2.0〜2.1、Df=0.0002以下と、最も優れた低誘電特性を示します。しかし、溶融粘度が高く押出成形の難易度は極めて高いです。コストも他の樹脂の5〜10倍となります。
これらの高機能材料は加工条件がシビアで、対応できる成形メーカーが限られています。

難燃材料を使った押出成形では、設計段階からの準備が品質と納期を左右します。規格認証の取得を見据えた進め方が重要です。
発注前に以下の項目を明確にしておくと、材料選定と成形条件の設定がスムーズに進みます。
適合すべき難燃規格
UL94の等級(V-0/V-1/V-2/HB)、試験片厚さ(1.5mm/3.0mmなど)を指定します。同じV-0でも、厚さによって合否が変わるため注意が必要です。
使用環境条件
連続使用温度、屋外/屋内、接触する薬品やオイルの種類を確認します。難燃性だけでなく、耐熱性・耐候性・耐薬品性の要件も材料選定に影響します。
環境規制への対応
RoHS指令、REACH規則、ハロゲンフリー要求の有無を確認します。規制対応が必要な場合、使用できる難燃剤の種類が限定されます。
認証取得の要否
UL認証やJIS認証を取得する場合、認証機関への材料登録や工場監査が必要です。スケジュールに余裕を持った計画が求められます。
難燃材料の押出成形では、試作と量産で品質差が出やすい特性があります。これは、難燃剤の分散状態や熱履歴が成形条件に敏感に影響するためです。
試作を別の成形メーカーで行い、量産を別メーカーに移管すると、条件の再現に時間がかかります。最悪の場合、規格試験に合格しないリスクもあります。
試作段階で確立した成形条件をそのまま量産に展開できる体制を整えることが、品質の安定性確保には重要です。また、穴あけ・切断などの二次加工まで含めた一貫対応により、工程間の品質バラツキを最小化できます。
特に難形状の異形押出や、複数規格の同時適合が求められる案件では、VA/VE提案を含めた検討が有効です。形状の最適化により、材料コスト削減と成形性向上の両立が可能になります。
難燃押出成形で電気部品を製造する際は、以下のポイントを押さえることが成功の鍵となります。
電線管やケーブルダクトなどの電気部品では、安全性確保のための難燃性と、製造コスト・納期のバランスが求められます。適切な材料選定と成形条件の最適化により、高品質な製品を安定供給することが可能です。
押出成形に関するご質問や課題がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 材料選定から工程設計、QA/QC体制の構築まで、長年の実績を生かした最適なご提案をさせていただきます。

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